VOL.1/NO.4 1996年4月25日
巡回医療
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大学付属図書館で司書をしていた。
うしろは、看護婦のタチヤーナさん

現役およびОBの看護婦が、ひとり暮らしの年人生活者を訪問するのが、このプロジェクト。4人一組5グループが、モスクワ市内のアパートなど数カ所を巡回訪問する。ひとりあたり5人のお年寄りを担当し、約100人を週に1〜2度訪れる。頼まれた買物や簡単な掃除、健康管理、薬の配布、必要に応じて医師への報告が主な仕事内容。

訪問先のお年寄りのほとんどが80歳代の女性で、血圧が高く心臓疾患を抱えている。糖尿病も多い。看護婦さんは、体調を聞きながら、血圧を測り、医師から預かってきた降圧剤などを渡す。

モスクワ郊外の村に住むこのご夫婦(左下)を週に2度訪問しているのはオリガさん。近くのコルホーズで長年働いたふたりは、小さな一軒家で年金で暮らしている。庭に小さな菜園をつくり、鶏や山羊を飼っているが、水は近くまで汲みに行かなければならない。一番近い電話まで歩いて10分なので、心臓の具合が悪くなっても救急車を呼ぶこともできない。

こうした状況は、アパートでひとり暮らしの老人にとっても同じだ。知人の電話で救急車を呼んだところで、すぐにきてくれない。3日後に医師の往診があればましなほうだという。

ロシアには女医が多く、女性が社会進出している証拠とされている。しかし医療の末端で傷の手当をしている例がほとんどで、給料も極めつけやすい。病院や大学で上層にのぼる女医はごくわずかだ。女性が就くことの多い教師、医師・看護婦、タイピストが安月給であることは誰もが知っている。せいぜい3000円ほどだ。

そこでこのプロジェクトでは、現役の看護婦さんには非番のときに巡回医療に参加してもらっている。お年寄りにとっては専門家のアドバイスが得られて安心だし、病院や医師とのつながりがあるほうが対応も早く、薬なども手に入りやすいからだ。

ひとり暮らしのお年寄りたち、とくに女性の部屋は例外なく清潔で整理整頓され、じつにきれいに住んでおられる。

ところで、前号で、ランチ宅配を始めるにあたり、「日本人が食事に毒を盛って部屋を奪おうとしているんじゃないか」と疑われたと書いたが、それには理由がある。

老い先短い老人たちが、「死ぬまで面倒をみてやるから」といわれ、部屋の相続人にしたとたんに殺されたり、都心の再開発のため部屋をあけ渡すよう脅され、かわりに不便な郊外の部屋をあてがわれた例など、部屋からみの事件が少なからず起きているからだ。

血圧を測るワレンチーナさん
笑顔で看護婦さんを迎える
薬局の薬は高くなって、買えない

自宅で娘に介護されていたが、
昨1995年夏に亡くなった。